- 健康についての考え方
- 2026.09.28
認知症予防は40代から―脳を守るために今からできる7つの習慣
認知症予防は40代から―脳を守るために今からできる7つの習慣
「認知症の予防なんて、まだまだ先の話」
40代、50代の方なら、そう思われるかもしれません。
ところが最近の研究では、認知症の予防を考えるうえで大切なのは、70代、80代になってからではなく、もっと若い頃からの生活習慣だということが分かってきました。
特にアルツハイマー病では、物忘れなどの症状が現れるかなり前から、脳の中では少しずつ変化が始まっていると考えられています。
だからこそ、元気な40代、50代から「脳を守る生活」を始めることが大切なのです。
今回は、将来の認知症リスクを減らすために、今日から意識したい7つの習慣をご紹介します。
① 血圧を「高いまま」にしない
認知症というと「脳だけの病気」と考えてしまいがちですが、実は脳の健康と血管の健康には深い関係があります。
脳には非常に細い血管が張り巡らされており、そこから酸素や栄養を受け取っています。
高血圧の状態が長く続くと、こうした細い血管にも少しずつ負担がかかります。
特に40〜50代の高血圧は、将来の認知症リスクとの関連が指摘されています。
健康診断で「少し高めですね」と言われても、症状がないため放置してしまう方は少なくありません。
しかし血圧は、「症状がないから大丈夫」とは限りません。
まずは自分の血圧を知ること。
家庭でも定期的に測り、高い状態が続く場合には医療機関へ相談しましょう。
② LDLコレステロールや血糖値を確認する
2024年に発表されたLancet Commissionの報告では、認知症の修正可能なリスク因子として「高LDLコレステロール」が新しく加えられました。
LDLコレステロールはいわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるものです。
血液中に増えすぎると動脈硬化を進める原因の一つになります。
また、糖尿病も認知症との関連が知られています。
つまり、
「脳を守ること」と「血管を守ること」は別々ではないのです。
健康診断では体重だけを見るのではなく、血圧、血糖、HbA1c、LDLコレステロールなどにも目を向けてみましょう。
40代からこうした数値を管理することが、20年、30年後の脳を守ることにつながります。
③ 「運動しなければ」より、まず歩く
身体活動の不足も認知症のリスク因子の一つです。
とはいえ、
「毎日ジムに行きましょう」
「毎朝5km走りましょう」
と言われても、なかなか続きませんよね。
大切なのは、特別な運動を一時的に頑張ることではなく、日常生活の中で身体を動かす習慣をつくることです。
少し遠くのお店まで歩く、エレベーターではなく階段を使う、休みの日に散歩する。
そんな小さなことからで十分です。
筋肉を使って身体を動かすことは、血流や代謝、心肺機能を保つことにもつながります。
「運動する時間がない」という方ほど、まずは生活の中の「歩く時間」を増やしてみましょう。
④ 耳と目の衰えを放置しない
意外に思われるかもしれませんが、「難聴」は認知症の重要なリスク因子として注目されています。
耳が聞こえにくくなると、
「聞き返すのが申し訳ない」
「会話についていけない」
と感じ、人との会話そのものを避けるようになることがあります。
すると、人と話す機会や外出する機会が減り、脳に入ってくる刺激も少なくなってしまいます。
視力についても同じです。
2024年のLancet Commissionでは、「未治療の視力低下」も新たなリスク因子として加えられました。
「年齢だから仕方ない」と放置するのではなく、眼鏡を調整したり、白内障など治療可能な病気がないか調べたりすることも大切です。
よく聞こえること。
よく見えること。
それも脳を守るための大切な健康管理なのです。
⑤ 人と話す時間を大切にする
認知症予防というと「脳トレ」を思い浮かべる方も多いでしょう。
もちろん、頭を使うことは大切です。
しかし、もっと身近な脳トレがあります。
それが「人と話すこと」です。
相手の話を聞き、その意味を理解し、自分の考えをまとめ、言葉にして返す。
さらに相手の表情を読み取り、声の調子を感じながら会話を続けます。
何気ない会話ですが、実は脳はたくさんの働きを同時に行っています。
友人とお茶をする。
家族と食事をする。
趣味の集まりに参加する。
近所の人と挨拶をする。
こうした人とのつながりを大切にすることも、立派な認知症対策です。
⑥ 「新しいこと」をはじめる
年齢を重ねるにつれて、私たちの生活はどうしても決まったパターンになりやすくなります。
いつもの道を歩き、いつもの店へ行き、いつもの人と話す。
もちろん安心できる生活は大切ですが、ときには脳に新しい刺激を与えてみましょう。
新しい料理を作ってみる。
旅行へ行く。
楽器を始める。
外国語を勉強する。
スマートフォンの新しい機能を覚える。
行ったことのない場所を散歩する。
難しいことをする必要はありません。
大切なのは、
「もう歳だから覚えられない」
と決めつけないことです。
何歳になっても「初めて」を楽しむ習慣を持っておきたいものです。
⑦ 「身体の健康」と「脳の健康」を分けて考えない
最後に、一番大切にしていただきたいことです。
認知症を予防するために、特別な健康食品を食べたり、難しい脳トレをしたりしなければならないわけではありません。
1)血圧を管理する。
2)血糖やコレステロールを確認する。
3)身体を動かす。
4)タバコを吸わない。
5)お酒を飲みすぎない。
6)耳や目の不調を放置しない。
7)人とのつながりを持つ。
こうして見てみると、認知症予防の多くは「普通の健康づくり」と重なっています。
つまり、
身体に良い生活は、脳にも良い生活なのです。
10年後、20年後のために今日からできること
認知症には年齢や遺伝など、自分では変えることのできない要因もあります。
ですから、生活習慣に気をつければ絶対に認知症にならない、というわけではありません。
一方で、世界的な研究では、高血圧、糖尿病、運動不足、難聴、社会的孤立、喫煙、高LDLコレステロールなど、私たちが働きかけられる要因がいくつもあることが分かっています。
認知症予防で大切なのは、
「認知症にならないために何をするか」だけではなく、「いつまでも元気に生活するために、今の身体をどう大切にするか」
という考え方なのかもしれません。
40代、50代は、まだ身体が動くからこそ無理ができてしまう年代です。
多少血圧が高くても、少し太ってきても、運動不足でも、日常生活にはそれほど困らないかもしれません。
しかし、その毎日の積み重ねが10年、20年後の身体をつくります。
今日から全部を変える必要はありません。
まずは10分歩いてみる。
久しぶりの友人に連絡してみる。
健康診断の結果をもう一度見直してみる。
聞こえにくさや見えにくさがあれば、一度検査を受けてみる。
そんな小さな一歩で十分です。
「今の自分の身体を大切にすることが、未来の自分の脳を守ることにつながる。」
認知症予防は、70歳になってから始めるものではありません。
40代、50代の今だからこそできることがあります。
10年後、20年後も自分の足で歩き、好きな場所へ出かけ、大切な人と笑って話せるように。
今日から少しずつ、身体と脳を守る習慣を始めてみませんか。
- 足の痛み
- 2026.09.12
あなたのそのかかとの痛みは「踵骨棘」が原因かもしれません
あなたのそのかかとの痛みは「踵骨棘(しょうこつきょく)」が原因かもしれません

「朝起きて、最初の一歩でかかとがズキッと痛む」
「長く座ったあと、立ち上がって歩き始めるとかかとが痛い」
「歩いているうちに少し楽になるけれど、翌朝になるとまた痛い」
このような症状はありませんか?
かかとの痛みにはさまざまな原因がありますが、その一つとして考えられるのが「踵骨棘(しょうこつきょく)」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単にいうと、かかとの骨にできる「トゲのような骨の突起」です。
レントゲン写真を見ると本当にトゲのように見えるため、
「こんなものが刺さっているから痛いんだ!」
と思ってしまいます。
しかし、実際のかかとの痛みは、それほど単純ではありません。
今回は「なぜかかとに骨のトゲができるのか?」そして「どうすればかかとへの負担を減らすことができるのか?」についてお話しします。
踵骨棘とは?
私たちのかかとには「踵骨(しょうこつ)」という大きな骨があります。
その踵骨には、足の裏を支える「足底腱膜(そくていけんまく)」などの組織が付着しています。
足底腱膜は、かかとから足の指の付け根付近まで伸びている丈夫な組織です。
足の裏には「土踏まず」がありますね。
この足のアーチを支え、歩いたり走ったりした時に足へ加わる衝撃を吸収するために重要なのが足底腱膜です。
ところが何らかの理由で足底腱膜が繰り返し強く引っ張られると、かかとの付着部分に長期間にわたってストレスが加わります。
そのような慢性的な負荷への反応として、踵骨の一部に骨の突起が形成されることがあります。
これが「踵骨棘」です。
「骨のトゲが刺さって痛い」とは限りません
ここはとても大切なところです。
踵骨棘が見つかると、
「この骨のトゲが足の裏に刺さっているから痛い」
と思われる方が多いのですが、必ずしもそうではありません。
レントゲンで踵骨棘が確認されても、まったく痛みを感じていない方もいます。
反対に、強いかかとの痛みがあるのに、はっきりした骨棘がない場合もあります。
つまり、
踵骨棘がある=必ず痛い
ではないのです。
かかとの痛みでは、踵骨棘そのものだけではなく、足底腱膜など周辺組織に繰り返し加わっている負担や炎症を考えることが重要です。
むしろ踵骨棘は、
「長い間、この場所に負担がかかっていましたよ」
という体からのサインの一つとして考えると分かりやすいでしょう。
なぜ「朝の一歩目」が痛いのでしょう?
かかとの痛みで特徴的なのが、
「朝起きて最初の一歩が一番痛い」
という症状です。
これは足底腱膜炎でもよくみられます。
日中は歩くたびに足底腱膜が伸びたり縮んだりしています。
ところが睡眠中は、何時間も足をほとんど動かしません。
その間に足底腱膜やふくらはぎ周辺の組織がこわばりやすくなります。
そして朝起きて、いきなり体重をかけます。
その瞬間、こわばっていた足底腱膜が急に引き伸ばされます。
特に足底腱膜の踵骨への付着部分に炎症や細かな組織の損傷が起こっていると、
「ズキッ!」
という強い痛みを感じることがあります。
ところがしばらく歩いていると、筋肉や足底腱膜が動き始め、組織のこわばりが減ってくるため、痛みが軽くなることがあります。
これが「朝は痛いけれど、歩いているうちに楽になる」という症状につながります。
なぜ足底腱膜に負担がかかるのでしょう?
では、なぜ足底腱膜に負担が集中するのでしょうか。
原因は一つではありません。
例えば、
・長時間の立ち仕事
・歩く時間が急に増えた
・ランニングやスポーツ
・硬い床の上で長時間過ごす
・足に合っていない靴
・体重増加
・加齢による足の機能変化
・ふくらはぎやアキレス腱の硬さ
・足首の動きの悪さ
・扁平足や足のアーチの低下
など、さまざまな要素が関係します。
そして、もう一つ重要なのが「歩き方」です。
かかとだけを治療しても繰り返すことがあります
痛い場所は「かかと」です。
そのため、
「かかとを揉めばいい」
「足の裏を伸ばせばいい」
と思ってしまいがちです。
しかし、人間は足だけで歩いているわけではありません。
足首、膝、股関節、骨盤、そして体幹まで連動して歩いています。
例えば股関節が十分に動かなければ、その動きを足首や足部が補わなければならないことがあります。
膝の向きが崩れれば、足の裏にかかる体重の位置も変化します。
骨盤や体幹が安定しなければ、歩くたびに体が左右へ大きく揺れ、その負担を足が受け止めることになります。
つまり、
痛いところが、必ずしも負担を作っているところとは限らない
のです。
これは腰痛や膝痛などにも共通する、とても大切な考え方です。
ふくらはぎの柔軟性も大切です
かかとの痛みがある方にぜひ確認していただきたいのが、ふくらはぎの柔軟性です。
ふくらはぎの筋肉からアキレス腱、かかとの骨、そして足底部は力学的につながっています。
ふくらはぎやアキレス腱が硬く、足首が十分に曲がらない状態になると、歩く時に足底部へ余計な負担がかかることがあります。
特に、
「しゃがむとかかとが浮いてしまう」
「足首が硬い」
という方は注意が必要です。
無理のない範囲でふくらはぎをストレッチし、足首の柔軟性を保つことは、かかとへの負担を減らすためにも大切です。
痛い時に無理に足裏をゴリゴリしない
かかとが痛いと、ゴルフボールや硬いマッサージ器具を使って足の裏を強く刺激する方がいます。
気持ちよく感じる程度ならよい場合もありますが、痛みが強い時に、
「痛いほど効いている」
と思って強く刺激するのはおすすめできません。
炎症を起こしている組織にさらに強い刺激を加えれば、かえって症状を悪化させる可能性があります。
痛みが強い時期は無理をせず、まず負担を減らすことが大切です。
靴を見直すことも大切です
毎日履いている靴も確認してみましょう。
靴底がすり減っていませんか?
特に片側だけ大きくすり減っている場合は、歩き方に偏りがある可能性があります。
また、底が極端に薄い靴やクッション性が低下した古い靴では、歩くたびにかかとへ強い衝撃が加わることがあります。
必要に応じてクッション性のある靴やインソールを利用することで、痛みが軽減する場合もあります。
ただし、インソールも「入れれば治る」というものではありません。
あくまで足にかかる負担を調整する方法の一つです。
本当に大切なのは「なぜそこに負担がかかったのか?」
踵骨棘やかかとの痛みを考える時に、一番大切にしていただきたいのがこの視点です。
「なぜ、かかとのこの場所に負担が集中したのだろう?」
ということです。
足首が硬いのかもしれません。
ふくらはぎが硬いのかもしれません。
足のアーチがうまく働いていないのかもしれません。
股関節の動きが悪いのかもしれません。
歩き方や立ち方に問題があるのかもしれません。
一日中立っている生活そのものが負担になっている場合もあります。
痛い場所だけを見るのではなく、足首・膝・股関節・骨盤まで含めて体全体の使い方を確認することが、繰り返すかかとの痛みを改善するうえで重要です。
「骨棘があるから一生痛い」わけではありません
レントゲンを見て、
「かかとに骨のトゲがあります」
と言われると不安になると思います。
「この骨を取らないと治らないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、骨棘が存在していても痛みのない方はいます。
大切なのは、レントゲン写真だけを見るのではなく、現在どの組織が痛みを出しているのか、そしてなぜそこに負担が集中しているのかを考えることです。
かかとの痛みが続いている方は、
「年齢のせいだから」
「骨のトゲがあるから仕方がない」
と諦めないでください。
姿勢や歩き方を見直す。
ふくらはぎや足首、股関節の柔軟性を改善する。
足のアーチがきちんと働くようにする。
自分に合った靴を選ぶ。
そして必要に応じて運動量や立っている時間を調整する。
こうしたことによって、かかとに集中している負担を少しずつ減らしていくことが大切です。
朝起きた時の「最初の一歩」が痛い。
それは単に「かかとの骨にトゲができたから」ではなく、
「毎日の生活の中で、かかとに負担が集中していますよ」
と体が教えてくれているサインなのかもしれません。
痛いところだけを見るのではなく、「なぜそこが痛くなったのか?」まで考えて体を整えていきましょう。
※かかとの強い痛みが続く場合や、腫れ・熱感・しびれがある場合、外傷後に痛みが出た場合などは、踵骨棘や足底腱膜炎以外の疾患も考えられます。自己判断せず、整形外科などの医療機関で適切な診断を受けることをおすすめします。
- 腰痛
- 2026.09.12
どうして朝起きた時に腰が痛くなるの?
どうして朝起きた時に腰が痛くなるの?

「朝、目が覚めると腰が痛い」
「ベッドから起き上がる時が一番つらい」
「でも、しばらく動いていると不思議と痛くなくなる」
このような腰痛でお悩みの方は意外と多くいらっしゃいます。
朝は痛かったのに、顔を洗って朝食をとり、仕事に行く頃には痛みを感じなくなっている。
そうすると、
「動いたら治ったから大丈夫」
と思ってしまいますよね。
しかし、ここに朝の腰痛を考えるうえで大切なポイントがあります。
「痛みを感じなくなった=腰に問題がなくなった」とは限らないのです。
むしろ毎朝のように同じことを繰り返しているのであれば、普段の生活の中で腰に少しずつ負担がかかり続けている可能性があります。
今回は「なぜ朝起きた時に腰が痛いのに、動いていると楽になるのか?」ということから、腰痛を繰り返さないために大切なことを考えてみましょう。
寝ている間は体をほとんど動かしていません
私たちは眠っている間、寝返りはしているものの、日中に比べると筋肉や関節を動かす量が大幅に少なくなります。
筋肉には、収縮したり緩んだりすることで血液やリンパ液などの循環を助ける働きがあります。
歩いている時には脚やお尻、腰周辺の筋肉が繰り返し動きます。
ところが眠っている間は、この働きが少なくなります。
そのため、起床直後は日中活動している時と比べて、腰周辺の循環や組織液の動きがゆっくりした状態になります。
ここが朝の腰痛を考える一つのポイントです。
腰に負担がかかると小さな炎症が起こることがあります
「炎症」と聞くと、真っ赤に腫れたり、激しい痛みが出たりする状態を想像するかもしれません。
しかし炎症には程度があります。
例えば腰の筋肉や靭帯、関節などに繰り返し負担が加わると、組織に微細なストレスが生じ、炎症反応に関係するさまざまな物質が放出されます。
これらの中には痛みを感じる神経を刺激したり、痛みに対して敏感にしたりするものがあります。
日中は筋肉や関節を動かしているため循環も比較的保たれていますが、睡眠中は動きが少なくなります。
そのため、炎症に関係する物質や痛みに関係する代謝産物などが局所にとどまりやすくなることが、朝の痛みやこわばりに関係していると考えられます。
では、なぜ動き始めると痛くなくなるのでしょう?
朝起きて歩き始めると筋肉が動きます。
筋肉が収縮したり緩んだりすることで循環が促され、関節も少しずつ動き始めます。
すると、寝ている間に滞りやすかった組織液の動きも活発になります。
その結果、局所にとどまっていた炎症に関係する物質や代謝産物などが移動しやすくなり、さらに筋肉や関節のこわばりも減ってくるため、痛みを感じにくくなることがあります。
朝起きた直後には、
「腰が痛いなあ……」
と思っていたのに、
トイレへ行って、着替えて、朝食を食べて、少し歩いているうちに、
「あれ?そういえば腰が痛くない」
となることがあるのは、このような体の変化も一つの理由として考えられます。
「動いたら治った」ではないことが重要です
ここで最もお伝えしたいのが、
痛みを感じなくなったからといって、腰にかかっている負担そのものがなくなったとは限らない
ということです。
例えば、普段の生活の中で腰に100の負担がかかると痛みが出る人がいるとしましょう。
日中の悪い姿勢や座り方、体の使い方などによって毎日少しずつ腰へ負担がかかり続けている。
日中は動いているため痛みをそれほど感じません。
ところが夜になって数時間ほとんど動かなくなると、朝になって痛みとして感じる。
そして起きて動き始めると、また痛みを感じにくくなる。
しかし、日常生活で腰へ負担をかける原因そのものは残っています。
すると翌朝になると、また痛い。
これを毎日のように繰り返してしまいます。
ですから、
「朝は痛いけれど昼には治るから大丈夫」
ではなく、
「どうして毎日、腰に負担が蓄積しているのだろう?」
と考えることが大切なのです。
本当に改善した状態とは?
朝の腰痛を改善するということは、単に朝の痛みをごまかすことではありません。
大切なのは、日中に腰へ加わっている負担そのものを減らしていくことです。
腰にかかる負担が少なくなれば、夜の間に問題となるような炎症反応や組織へのストレスも起こりにくくなります。
すると、
「以前は毎朝腰が痛かったのに、そういえば最近は朝も痛くないな」
という状態を目指すことができます。
つまり朝の腰痛は、夜だけを考えるのではなく、前の日をどのように過ごしたのかという視点から考えることがとても大切なのです。
腰への負担を減らすために大切な「姿勢」
まず見直していただきたいのが普段の姿勢です。
腰痛というと「腰の筋肉が弱い」「腰が硬い」と考えがちですが、実際には腰そのものよりも、体全体の使い方に問題が隠れていることがあります。
例えば、長時間のデスクワーク。
背中を丸め、骨盤が後ろに倒れた状態で何時間も座っていると、腰の一部分に負担が集中します。
反対に、立っている時に必要以上に腰を反らせる姿勢でも腰の関節に負担がかかります。
大切なのは「胸を張って真っすぐにする」ことではありません。
一つの姿勢を長時間続けず、腰だけに負担を集中させないことです。
どんなに良い姿勢でも、何時間も同じ姿勢を続ければ体には負担になります。
30分〜1時間に一度は立ったり、少し歩いたり、姿勢を変えたりすることを心がけてみましょう。
股関節が硬いと腰が代わりに動きます
もう一つ、とても重要なのが股関節です。
例えば床にある物を拾う時、本来であれば腰だけではなく股関節もしっかり曲がります。
ところが股関節が硬い人は、本来股関節が担当するはずの動きを腰が代わりに行わなければなりません。
一回の動作であれば小さな違いです。
しかし、それを毎日何十回、何百回と繰り返したらどうでしょう。
少しずつ腰への負担が蓄積していきます。
特にお尻の筋肉や太ももの後ろ、股関節の前にある腸腰筋などが硬くなっている方は注意が必要です。
腰痛だから腰だけをストレッチするのではなく、股関節がきちんと動いているかを確認することが腰への負担を減らすうえで非常に重要です。
体幹の筋肉も「腰を守るコルセット」です
そしてもう一つ大切なのが体幹の筋肉です。
お腹や背中、骨盤周辺には、姿勢を安定させるためのさまざまな筋肉があります。
これらが適切に働くことで、体を動かした時の力を分散し、腰の一部分だけに負担が集中するのを防いでいます。
ところが運動不足などによって体幹の筋肉がうまく働かなくなると、立つ、座る、物を持つといった日常動作でも腰への負担が大きくなることがあります。
ただし、
「腰痛だから腹筋を100回しましょう」
という意味ではありません。
無理な腹筋運動は、かえって腰に負担をかけることがあります。
呼吸をしながらお腹を安定させる運動や、ウォーキングなどから始め、腰を固めるためではなく、体全体を安定して動かすための筋肉を少しずつつけていくことが大切です。
マットレスを買い替える前に考えてほしいこと
朝腰が痛いと、
「マットレスが悪いのでは?」
と考える方も多いと思います。
もちろん寝具が体に合っていない場合もあります。
しかし、マットレスだけが原因とは限りません。
毎日の姿勢が悪く、股関節が硬く、体幹の筋力が低下し、腰に負担のかかる体の使い方をしているとしたら、どれだけ高価なマットレスに替えても根本的な問題は残ります。
寝具を見直すことも一つの方法ですが、その前に、
「日中、腰に負担をかけ続けていないだろうか?」
ということを考えてみてください。
朝の腰痛は「前日の体の使い方」を教えてくれているのかもしれません
朝起きた時に腰が痛い。
でも動いていると楽になる。
これは決して珍しいことではありません。
睡眠中は筋肉や関節を動かす量が減り、循環や組織液の動きも日中よりゆっくりになります。そのため、腰に負担がかかっている場合には、炎症に関係する物質や痛みに関係する代謝産物などの影響を感じやすくなり、朝の痛みやこわばりとして現れることがあります。
そして起きて体を動かし始めると、筋肉や関節が動き、循環が促されることで痛みを感じにくくなることがあります。
しかし大切なのは、その先です。
なぜ腰に炎症や負担が起こる状態が毎日続いているのでしょうか?
そこを改善しなければ、朝になるとまた痛むという状態を繰り返してしまいます。
普段の姿勢を見直す。
長時間同じ姿勢を続けない。
股関節の柔軟性を高める。
適度に歩く。
体幹の筋肉を少しずつつける。
腰だけに頼らず、体全体を使って動けるようにする。
こうした毎日の小さなケアによって腰に加わる負担を減らしていけば、やがて「動いたら痛くなくなる」ではなく、「朝起きた時から痛くない」状態を目指すことができます。
痛みは悪者ではありません。
体が「ここに少し負担がかかっていますよ」と知らせてくれているサインでもあります。
朝の腰痛を単に「寝方が悪かった」で終わらせず、日常生活の中に隠れている腰への負担を見つけるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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