〜かたよった考えばかりに囲まれないために〜
最近は、スマートフォンやパソコンで、好きなニュースや動画、SNSを見るのが当たり前になりましたね。
とても便利な時代ですが、実はその便利さの裏で「自分の考えがかたよってしまう」ことがあります。
この現象を心理学では「エコーチェンバー効果(こうか)」と呼びます。
今日はこの「エコーチェンバー効果」と、特に気をつけたい健康情報の見方について、わかりやすくお伝えします。
1「エコーチェンバー効果」とは?
「エコー(echo)」とは山びこのこと。
山で「ヤッホー」と叫ぶと、自分の声が何度も返ってきますね。
インターネットでも、これと同じようなことが起きます。
自分と似た意見の人の話や投稿ばかりを見ているうちに、まるで“同じ声”がこだまのように響き続ける――これが「エコーチェンバー効果」です。
AIの発達により自分の気になることワードでネット検索したり、動画検索するとそれに関連したページばかりが表示されやすくなっております。
その時表示された情報ばかりを見ているとあたかも、その情報が正解と感じたり、その情報が絶対に正しいと感じてしまいやすくなります。
例えば「ヨーグルトの健康効果」と検索すると、ヨーグルトがいかに体に良いのかというような情報ばかり検索結果に表示されます。
しかし、「ヨーグルトの危険性」と検索すると、全く同じ食品でもその真逆の情報ばかり表示されます。
このように、その人の検索する人の考え方のかたよりによって検索結果が左右されてしまうということになります。
また、SNSでは、気に入った投稿に「いいね」したり、共感できる人をフォローしたりしますね。
すると、あなたの画面には、似た意見や同じ考えの人の情報ばかりが並ぶようになります。
そうなると、「みんな自分と同じ考えなんだ」と錯覚してしまうのです。
2 なぜそうなるの?
人の脳には、「自分にとって気持ちのいい情報」を選ぶ性質があります。
自分の考えを否定されたり、違う意見を聞くと、誰でもイヤな気分になりますよね。
だから、つい「自分の考えを応援してくれる情報」ばかりを選んでしまうのです。
これを心理学では「確証バイアス」と呼びます。
そしてSNSや動画サイトの“おすすめ機能”も、この傾向を強めます。
AI(人工知能)が「あなたがよく見る内容」を学んで、似た投稿を次々に表示してくるのです。
その結果、知らないうちに「自分の世界の中だけでかたよった情報が回っている」状態になってしまうのです。
3エコーチェンバーがもたらす影響
この状態が続くと、次のようなことが起こりやすくなります。
① 考え方がかたよる
似た意見ばかり見ていると、違う考えを受け入れるのが難しくなります。
「違う意見=間違っている」と感じ、冷静に話を聞けなくなることがあります。
② 誤った情報を信じてしまう
同じ内容を何度も見ると、「何度も見る=本当だ」と錯覚してしまうことがあります。
これを「真実性の錯覚効果」と言います。
たとえ根拠があいまいな話でも、何度も目にすると信じ込みやすくなります。
③ 社会の分断を生む
似た意見の人だけで固まると、「反対の意見の人は間違っている」と敵視してしまい、対話が難しくなります。
これはネット上のトラブルや誤解のもとにもなります。
4 健康情報をネットで探すときの注意点
この「エコーチェンバー効果」は、特に健康や医療の情報で注意が必要です。
「〇〇が体にいい」「〇〇によって○○が治る」といった言葉はとても魅力的ですが、情報の受け取り方を間違えると、かえって健康を損ねてしまうこともあります。
① 体験談は“その人の話”にすぎない
SNSなどでは「このサプリで元気になった!」「○○療法で長年の痛みが治った!」という体験談がたくさん見られます。
でも、健康法は人によって合う・合わないがあります。
その人に効果があっても、あなたの体には合わないこともあります。
ですから、体験談を読むときは「へぇ、そういう人もいるんだな」くらいの距離感で受け止めるのが安全です。
② “広告”と“情報”を見分ける
最近は、広告なのか情報記事なのか分かりにくいページが増えています。
「医師監修」と書いてあっても、実際には宣伝目的で作られたサイトも多いのです。
文の最後や小さな文字で「PR」「広告」などと書かれていないか、よく確認してみましょう。
また、「これを飲めばすべて解決」「どんな病気にも効く」などの言葉がある場合は、注意が必要です。
本当に効果があるものほど、そんなに簡単には言い切れません。
③ 「出どころ」を確かめる
情報を見るときは、「誰が書いているのか」を確かめることが大切です。
厚生労働省、医師会、大学病院などの公的機関の発信かどうかをチェックしましょう。
また、SNSの場合は、プロフィールや資格なども見て「専門的な裏づけ」があるかを判断します。
不明な個人や「○○博士」「健康アドバイザー」など肩書きだけの人は、信頼できるとは限りません。
④ 検索結果の“上位”=“正しい”ではない
検索サイトで上に出てくる情報が、一番正しいとは限りません。
企業広告や人気ページが上位に出やすい仕組みになっているためです。
「検索して一番上に出たから安心」と思わず、複数のページを比べて読むことが大切です。
⑤ 自分の不安をあおる情報は距離を置く
「放っておくと危険!」「今すぐ治療しないと手遅れ!」など、不安をあおるような言葉が多い情報は、注意が必要です。
人の心理として、不安になると冷静な判断ができなくなります。
そんな時は、一度スマホを閉じて深呼吸しましょう。
落ち着いてから、信頼できる医療機関や専門家に相談するのが一番です。
5エコーチェンバーから抜け出す3つのコツ
1. 反対意見にも少し触れてみる
「自分とは違う考え方もある」と知るだけで、視野が広がります。
2. 情報の出どころを意識する
SNSよりも、医師や公的機関の情報を優先しましょう。
3. 正しさよりも多様さを大切にする
世の中の多くのことは、白黒では割り切れません。
人の体も個人差があり、その人の体に合うもの合わないもの、合う健康法、合わない健康法も様々です。
「人それぞれ自分に合ったものでいい」と思える心の柔らかさが、健康にもつながります。
5 まとめ 〜心の健康にもつながる情報の見方〜
エコーチェンバー効果は、自分でも気づかないうちに陥ってしまうものです。
「自分の考えは正しい」と信じすぎず、たまには立ち止まって「他の意見もあるかもしれない」と思うだけで、ぐっと世界が広がります。
特に健康情報は、自分の体に関わる大切なことです。
ネットの情報をそのまま信じるのではなく、「専門家の意見を聞く」「複数の情報を比べる」ことを心がけましょう。
いろんな考えを知ることは、心に柔軟さを生み、ストレスを減らします。
情報に振り回されず、自分のペースで、安心できる判断をしていきましょう。
それが、現代を健康に生きるための“こころの養生”です。