あなたのそのかかとの痛みは「踵骨棘(しょうこつきょく)」が原因かもしれません
「朝起きて、最初の一歩でかかとがズキッと痛む」
「長く座ったあと、立ち上がって歩き始めるとかかとが痛い」
「歩いているうちに少し楽になるけれど、翌朝になるとまた痛い」
このような症状はありませんか?
かかとの痛みにはさまざまな原因がありますが、その一つとして考えられるのが「踵骨棘(しょうこつきょく)」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単にいうと、かかとの骨にできる「トゲのような骨の突起」です。
レントゲン写真を見ると本当にトゲのように見えるため、
「こんなものが刺さっているから痛いんだ!」
と思ってしまいます。
しかし、実際のかかとの痛みは、それほど単純ではありません。
今回は「なぜかかとに骨のトゲができるのか?」そして「どうすればかかとへの負担を減らすことができるのか?」についてお話しします。
踵骨棘とは?
私たちのかかとには「踵骨(しょうこつ)」という大きな骨があります。
その踵骨には、足の裏を支える「足底腱膜(そくていけんまく)」などの組織が付着しています。
足底腱膜は、かかとから足の指の付け根付近まで伸びている丈夫な組織です。
足の裏には「土踏まず」がありますね。
この足のアーチを支え、歩いたり走ったりした時に足へ加わる衝撃を吸収するために重要なのが足底腱膜です。
ところが何らかの理由で足底腱膜が繰り返し強く引っ張られると、かかとの付着部分に長期間にわたってストレスが加わります。
そのような慢性的な負荷への反応として、踵骨の一部に骨の突起が形成されることがあります。
これが「踵骨棘」です。
「骨のトゲが刺さって痛い」とは限りません
ここはとても大切なところです。
踵骨棘が見つかると、
「この骨のトゲが足の裏に刺さっているから痛い」
と思われる方が多いのですが、必ずしもそうではありません。
レントゲンで踵骨棘が確認されても、まったく痛みを感じていない方もいます。
反対に、強いかかとの痛みがあるのに、はっきりした骨棘がない場合もあります。
つまり、
踵骨棘がある=必ず痛い
ではないのです。
かかとの痛みでは、踵骨棘そのものだけではなく、足底腱膜など周辺組織に繰り返し加わっている負担や炎症を考えることが重要です。
むしろ踵骨棘は、
「長い間、この場所に負担がかかっていましたよ」
という体からのサインの一つとして考えると分かりやすいでしょう。
なぜ「朝の一歩目」が痛いのでしょう?
かかとの痛みで特徴的なのが、
「朝起きて最初の一歩が一番痛い」
という症状です。
これは足底腱膜炎でもよくみられます。
日中は歩くたびに足底腱膜が伸びたり縮んだりしています。
ところが睡眠中は、何時間も足をほとんど動かしません。
その間に足底腱膜やふくらはぎ周辺の組織がこわばりやすくなります。
そして朝起きて、いきなり体重をかけます。
その瞬間、こわばっていた足底腱膜が急に引き伸ばされます。
特に足底腱膜の踵骨への付着部分に炎症や細かな組織の損傷が起こっていると、
「ズキッ!」
という強い痛みを感じることがあります。
ところがしばらく歩いていると、筋肉や足底腱膜が動き始め、組織のこわばりが減ってくるため、痛みが軽くなることがあります。
これが「朝は痛いけれど、歩いているうちに楽になる」という症状につながります。
なぜ足底腱膜に負担がかかるのでしょう?
では、なぜ足底腱膜に負担が集中するのでしょうか。
原因は一つではありません。
例えば、
・長時間の立ち仕事
・歩く時間が急に増えた
・ランニングやスポーツ
・硬い床の上で長時間過ごす
・足に合っていない靴
・体重増加
・加齢による足の機能変化
・ふくらはぎやアキレス腱の硬さ
・足首の動きの悪さ
・扁平足や足のアーチの低下
など、さまざまな要素が関係します。
そして、もう一つ重要なのが「歩き方」です。
かかとだけを治療しても繰り返すことがあります
痛い場所は「かかと」です。
そのため、
「かかとを揉めばいい」
「足の裏を伸ばせばいい」
と思ってしまいがちです。
しかし、人間は足だけで歩いているわけではありません。
足首、膝、股関節、骨盤、そして体幹まで連動して歩いています。
例えば股関節が十分に動かなければ、その動きを足首や足部が補わなければならないことがあります。
膝の向きが崩れれば、足の裏にかかる体重の位置も変化します。
骨盤や体幹が安定しなければ、歩くたびに体が左右へ大きく揺れ、その負担を足が受け止めることになります。
つまり、
痛いところが、必ずしも負担を作っているところとは限らない
のです。
これは腰痛や膝痛などにも共通する、とても大切な考え方です。
ふくらはぎの柔軟性も大切です
かかとの痛みがある方にぜひ確認していただきたいのが、ふくらはぎの柔軟性です。
ふくらはぎの筋肉からアキレス腱、かかとの骨、そして足底部は力学的につながっています。
ふくらはぎやアキレス腱が硬く、足首が十分に曲がらない状態になると、歩く時に足底部へ余計な負担がかかることがあります。
特に、
「しゃがむとかかとが浮いてしまう」
「足首が硬い」
という方は注意が必要です。
無理のない範囲でふくらはぎをストレッチし、足首の柔軟性を保つことは、かかとへの負担を減らすためにも大切です。
痛い時に無理に足裏をゴリゴリしない
かかとが痛いと、ゴルフボールや硬いマッサージ器具を使って足の裏を強く刺激する方がいます。
気持ちよく感じる程度ならよい場合もありますが、痛みが強い時に、
「痛いほど効いている」
と思って強く刺激するのはおすすめできません。
炎症を起こしている組織にさらに強い刺激を加えれば、かえって症状を悪化させる可能性があります。
痛みが強い時期は無理をせず、まず負担を減らすことが大切です。
靴を見直すことも大切です
毎日履いている靴も確認してみましょう。
靴底がすり減っていませんか?
特に片側だけ大きくすり減っている場合は、歩き方に偏りがある可能性があります。
また、底が極端に薄い靴やクッション性が低下した古い靴では、歩くたびにかかとへ強い衝撃が加わることがあります。
必要に応じてクッション性のある靴やインソールを利用することで、痛みが軽減する場合もあります。
ただし、インソールも「入れれば治る」というものではありません。
あくまで足にかかる負担を調整する方法の一つです。
本当に大切なのは「なぜそこに負担がかかったのか?」
踵骨棘やかかとの痛みを考える時に、一番大切にしていただきたいのがこの視点です。
「なぜ、かかとのこの場所に負担が集中したのだろう?」
ということです。
足首が硬いのかもしれません。
ふくらはぎが硬いのかもしれません。
足のアーチがうまく働いていないのかもしれません。
股関節の動きが悪いのかもしれません。
歩き方や立ち方に問題があるのかもしれません。
一日中立っている生活そのものが負担になっている場合もあります。
痛い場所だけを見るのではなく、足首・膝・股関節・骨盤まで含めて体全体の使い方を確認することが、繰り返すかかとの痛みを改善するうえで重要です。
「骨棘があるから一生痛い」わけではありません
レントゲンを見て、
「かかとに骨のトゲがあります」
と言われると不安になると思います。
「この骨を取らないと治らないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、骨棘が存在していても痛みのない方はいます。
大切なのは、レントゲン写真だけを見るのではなく、現在どの組織が痛みを出しているのか、そしてなぜそこに負担が集中しているのかを考えることです。
かかとの痛みが続いている方は、
「年齢のせいだから」
「骨のトゲがあるから仕方がない」
と諦めないでください。
姿勢や歩き方を見直す。
ふくらはぎや足首、股関節の柔軟性を改善する。
足のアーチがきちんと働くようにする。
自分に合った靴を選ぶ。
そして必要に応じて運動量や立っている時間を調整する。
こうしたことによって、かかとに集中している負担を少しずつ減らしていくことが大切です。
朝起きた時の「最初の一歩」が痛い。
それは単に「かかとの骨にトゲができたから」ではなく、
「毎日の生活の中で、かかとに負担が集中していますよ」
と体が教えてくれているサインなのかもしれません。
痛いところだけを見るのではなく、「なぜそこが痛くなったのか?」まで考えて体を整えていきましょう。
※かかとの強い痛みが続く場合や、腫れ・熱感・しびれがある場合、外傷後に痛みが出た場合などは、踵骨棘や足底腱膜炎以外の疾患も考えられます。自己判断せず、整形外科などの医療機関で適切な診断を受けることをおすすめします。