人付き合いが苦手でもできる認知症予防とは
多くの研究で「認知症予防のために社会的交流が有効である」と言われていますが、そもそも社会的交流が苦手な人はいったいどうすれば認知症の予防する生活を実践することができるのでしょうか?
今回は社会的交流が苦手な方が実践できる方法や注意点についてお伝えします。
1)はじめに
結論を先に言うと人付き合いが苦手な人が認知症予防のために無理して人付き合いをする必要はありません
脳神経科学の研究では、確かに活発な社会交流が認知症予防に有効であるという結果が出ています。
しかし、無理をしてまで多数の人と交流する必要はまったくありません。
むしろ、ストレスを感じながらの交流は、コルチゾールというストレスホルモンを分泌させ、記憶を司る海馬に悪影響を与える可能性さえあります。
大切なのは「交流の量」ではなく、「自分が心地よいと感じられる方法で、社会とのつながりを持ち続けること」です。
今回は、人付き合いが苦手な方でも無理なく続けられる認知症予防の方法を詳しくご紹介します。
2)なぜ「つながり」が脳に良いのか?
そもそも、なぜ社会交流が認知症予防に良いのでしょうか?
その理由は主に3つあります。
1. 脳のマルチタスク訓練
会話では、相手の言葉を聞き(聴覚)、表情を読み取り(視覚)、自分の考えをまとめ、言葉にして発するという複雑な処理を同時に行います。
これにより前頭前野など複数の脳領域が活性化されます。
2. 感情の刺激
楽しい、嬉しいといったポジティブな感情は、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促します。
これは脳の活力維持に重要です。
3. 新奇性の体験:
他者と接すると、自分とは異なる価値観や情報に触れることができ、脳に新しい刺激(新奇性)を与えます。
新しい経験は脳の神経細胞(ニューロン)をつなぐシナプスを強化します。
しかし、これらのメリットは、必ずしも対面式の深い会話でなくても得られるということが最新の研究で分かってきています。
3)実践!無理のない「つながり」の作り方5選
それでは、具体的にどのような方法があるでしょうか?ご自身のペースでできそうなものから試してみてください。
1. デジタル空間で「ゆるやかにつながる」
① SNSやオンラインフォーラムの活用
直接会わずに、趣味や関心事について書き込んだり、コメントをもらったりするだけでも立派な社会交流です。
同じ趣味を持つ人と「いいね!」や短文のコメントを交換するだけでも、孤立感を防ぎ、脳を刺激します。
②オンライン講座の受講:
動画配信サービスやZoomの講座に参加するのもおすすめです。チャット機能で質問やコメントをすれば、講師や他の受講生と軽くつながることができます。
顔出しや発声が必須でないものが多いので、負担が少ないです。
2. 「ながら交流」で負担を減らす
①同じ空間を共有する
無理に話さなくても、図書館やカフェ、公園ベンチなどで他人と空間を共有するだけでも、人の気配を感じる「軽い社会的刺激」になります。
②散歩中の「会釈」から始める
散歩中にすれ違う人と目が合ったら、軽く会釈したり、微笑んだりするだけでもOKです。
ほんの些細な非言語コミュニケーションが、脳を活性化します。
3. 動物や自然と「交流」する
①ペットを飼う
ペットとの触れ合いは、ストレスを軽減し、無条件の愛着関係を築くことで、脳に安らぎと刺激を与えます。
世話をするという規則的な行動も生活のリズムを整えます。
犬や猫でなくても、メダカでも金魚でも簡単に飼えるものでも良いです。
それらの世話をするだけでも脳にやすらぎを与えてくれます。
②植物を育てる
ガーデニングや観葉植物の栽培は、生き物と「対話」するような行為です。
成長を観察し、世話をすることは、責任感や達成感をもたらし、前頭前野をよく使います。
探すと簡単に育てられる植物はいろいろあります。
100均のお店でもいろいろ観葉植物が販売されていますので、それから始めてみるとよいでしょう。
4. 創作活動で「自己表現」する
①日記やブログを書く
文章を書くことは、思考を整理し、記憶を呼び起こす最高の脳トレです。
誰かに読まれる可能性を想定して書くことで、間接的な「他者との対話」を生み出します。
SNSが苦手な方や拒否反応がある方もあるかもしれませんが、認知症予防のためにそれらを始めてみるのもよいでしょう。
②絵画や俳句、工作、料理、音楽などの創作
創作活動は非常に集中力を要し、大脑全体を活性化させます。
作品をSNSにアップしたり、趣味のコミュニティに提出したりすれば、それを見た他人からの反応が新たなつながりを生むきっかけになるかもしれません。
今は何かコミュニティーやサークルに所属していなくてもSNSや様々は方法で、多くの人の作品を匿名ででも発表することが可能です。
そのような方法で自分のペースで社会との接点をもつということも良いことです。
5. ボランティアで「役割」を得る
①直接対面しないボランティア
地域の清掃活動例えば公園や側溝の掃除、早朝のゴミ拾いなど、など直接人と接しないでできる活動は多くあります。
社会の役に立っているという「役割感」は、自尊心を高め、脳の健康維持に極めて重要です。
4)注意点〜ストレスを感じたらすぐに休む〜
ご紹介した方法を試す上で、最も大切な注意点が一つあります。
「少しでもストレスや疲れを感じたら、すぐに休み、決して無理をしない」です。
認知症予防は「人生を楽しむ」ことの延長線上にあります。それが義務や苦痛になってしまっては本末転倒です。今日は調子が悪いなと思ったら、何もせずに静かに過ごす日があっても全く問題ありません。
自分の心地よさを最優先に、できる範囲で少しずつ続けることが、長期的に見て最も効果的なのです。
5) まとめ:あなたのペースで、世界とゆるくつながりましょう
認知症予防に効果的なのは、決して「多数の友人と派手に交流すること」ではありません。
本質は、「孤独」ではなく「孤立」を防ぎ、自分が心地よいと感じる方法で脳に適度な刺激を与え続けることにあります。
散歩の時のちょっとした会釈、SNSへのひとことコメント、ペットへの語りかけ。
それらの小さな「つながり」の積み重ねが、あなたの脳を生き生きと保ち、豊かな毎日を支えるのです。どうぞご自身のペースを大切に、無理のない認知症予防を始めてみてください。